アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が繰り返し発症する慢性疾患です。症状は多様で、赤いブツブツ、乾燥肌、水ぶくれなど、様々な形で現れます。
発症の要因は複合的で、主に以下の3つが挙げられます。
- 皮膚のバリア機能低下
- 免疫系の異常反応
- 環境からの刺激
この疾患は遺伝的要因(アトピー素因)と深く関連しています。アトピー素因とは、家族にアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎など)の既往歴がある、または体内でIgE抗体(即時型アレルギーに関与)を生成しやすい体質を指します。
また、症状を悪化させる因子(悪化因子)もあります。主なものとして、食物アレルゲン、ダニ、ハウスダスト、花粉などが知られています。これらを把握し、適切に管理することが重要です。
子供と大人でアトピー性皮膚炎の
原因が異なる?
アトピー性皮膚炎が悪化する要因は、子供と大人で違いがあります。
子供のアトピー性皮膚炎の原因
子供の肌は未発達で、幼少期のアトピー性皮膚炎は成長とともに改善することが多いです。主な要因は「アトピー素因」で、本人や家族のアレルギー疾患の既往歴やアレルギー体質が関係します。生後4ヶ月で発症した場合、70%が1歳半までに寛解したという報告もあります。
大人のアトピー性皮膚炎の原因
大人に見られるアトピー性皮膚炎にも、アトピー素因が関係していますが、さらにストレスや妊娠・出産などの環境変化、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化といった要因も影響していると考えられています。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の症状は、年齢によって異なる症状を伴います。具体的には「乳児期(4歳まで)」「小児期(思春期まで)」「成人期(思春期以降)」に分けられます。
乳幼児期
乳幼児期のアトピー性皮膚炎の症状は、頭や顔に現れやすく、かゆみの強い湿疹が生じて、皮膚に細かいブツブツができて盛り上がったり、じくじくと液が出たりします。
小児期
小児期になると、症状は肘の内側や膝の裏側などに現れます。皮膚が乾燥してかさかさになり、皮がむけ、かゆみが生じるようになります。
成人期
成人期のアトピー性皮膚炎は、顔や上半身に治りにくい湿疹が現れ、皮膚の乾燥が強くなり、ごわごわとします。長期間の湿疹により色素沈着が現れることもあります。
アトピー性皮膚炎は他の病気を発症しやすい?
アトピー性皮膚炎にかかっていると、他のアレルギー性疾患(喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎)や、眼疾患(白内障・網膜剥離など)になりやすいと言われています。また他の皮膚感染症、例えばとびひ、みずいぼ、カポジ水痘様発疹症などの細菌やウイルスによる感染症にかかりやすくなります。
アトピー性皮膚炎の
検査方法
血液検査
血中のIgE抗体量を測定し、アレルギー反応の程度を調べます。特定のアレルゲンに対するIgE抗体も検出でき、患者様の体質や原因となる物質の特定に役立ちます。
パッチテスト
パッチテストは、皮膚に直接アレルゲンを貼付して行う検査方法です。主に接触性皮膚炎の原因物質を特定するのに用いられますが、アトピー性皮膚炎の患者様でも有用な場合があります。
様々な物質を含んだパッチを背中などに貼り、48時間後と72時間後、1週間後に皮膚の反応を観察します。この検査により、日常生活で接触する物質の中から症状を悪化させる原因を見つけ出すことができます。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は、遺伝や環境などの様々な要因で起こる病気で、現時点では病気そのものを完治させる治療方法はありません。治療の目標は、症状がない、または軽度で日常生活に支障がない状態を維持することです。
原因の除去・対策
アトピー性皮膚炎の原因となる因子を取り除くことで、悪化を防ぎます。食物アレルゲンや、環境アレルゲン、汗、接触刺激、接触アレルギー、ストレスなどが原因因子に該当します。
スキンケア
皮膚のバリア機能を高めるために、正しいスキンケアを日常生活の中で実践しましょう。
スキンケアの基本は入浴と保湿です。入浴は熱いお湯を避け、36~40℃の温度で入浴しましょう。保湿は1日に2回実施することで保湿効果を高めることができます。
薬物療法
アトピー性皮膚炎の治療のために投与する薬には、塗り薬と飲み薬があります。炎症を抑える塗り薬としては、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏といったものがあります。これらを適量使用します。飲み薬には抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、シクロスポリン、バリシチニブ、ウパダシチニブなどがあります。
アトピー性皮膚炎は
食べ物で
悪化することがある?
アトピー性皮膚炎患者の多くは、特別な食事制限を必要としません。ただし、特定の食物アレルギーが原因と診断された場合は例外です。不必要な食事制限は栄養バランスを崩す可能性があるため、医師の指示なしに行うべきではありません。
しかし、症状に影響を与える可能性のある飲食物はあります。
- アルコール:血管を拡張させ、炎症やかゆみを悪化させる可能性があります。適量を心がけましょう。
- ヒスタミンを多く含む食品:イチゴ、トマト、ナス、マグロ、イカなどは、かゆみを増強させる可能性があります。これらの食品に反応する場合は、摂取量を調整すると良いでしょう。
- 辛味や香辛料:体を温める作用があり、かゆみを誘発する可能性があります。
- 乳製品:一部の患者様で症状を悪化させることがあります。
これらの食品に対する反応は個人差が大きいため、ご自身の体調変化を観察し、必要に応じて医師に相談することが大切です。バランスの取れた食事と適切なスキンケアを組み合わせることで、症状のコントロールが可能になります。